SPECIAL INTERVIEW
山寺宏一×花江夏樹×森チャック
20年培われたイメージを大切に演じること
山寺さんと花江さんは、『いたずらぐまのグル~ミ~』
(以下『グル~ミ~』)への出演が決まったとき、どんなお気持ちでしたか?
山寺
とてもびっくりしました。血が垂れていて狂暴だけど、かわいいキャラクターじゃないですか?
しかも20年に渡ってファンの方に支持され続けている……。
そんな歴史のある人気キャラクターを「なぜ僕に?」と思ったんです。
どんな声で演じれば正解なのか、想像もつきませんでした。
花江
『グル~ミ~』という作品のことは知っていたので、とてもうれしかったですね。
ただ、グル~ミ~のキャラクターそのものは知っていたのですが、ピティーくんの存在はあまり意識してなかったんです。
あまりにもグル~ミ~のインパクトがあったので、「男の子のキャラクターも一緒にいたんだ!」と驚きました。ただ、あらためて2人の関係性を見ると、不思議で引き寄せられますね。
また、山寺さんと共演させていただく機会は貴重なので、素晴らしい体験になりました。
山寺
ここ必ず書いてくださいよ!
一同
(笑)。
チャックさんは『グル~ミ~』のアニメ化については、どんな思いがありますか?
森
12年前にも一度アニメ化の話があったのですが、諸般の事情でとん挫してしまったんです。
なので今回もアニメ化の話をいただいた時、「実現できたらいいなぁ」ぐらいの気持ちでいました。
そこに「山寺さんと花江さんに決まったよ!」と連絡をいただきまして、「これはガチだ……!」と(笑)。
もう宝くじに当たったような気分でした
山寺
アフレコには、先生も立ち会ってくださったので緊張しましたね。
原作者の方がアフレコに来て下さるのは、なかなか珍しい機会ですから。
花江
やっぱり原作者の方に見られるのが一番緊張しますね。
山寺
イメージと違っていたらどうしようかと。
森
たしかにグル~ミ~は、20年間、うなり声しか上げないキャラクターでした。
人間が聞き取れるような言葉っぽいものを発したのは、今回のアニメが初めてだったんです。
自分としても、それは新しい発見と冒険でした。
山寺
言葉のようなものといっても「グマ!」ですからね。
花江
でもしっくりきましたね(笑)。
山寺
先生はどんなイメージで考えていたんですか?
森
絵がシンプルでかわいいキャラクターですから、それとのギャップがあったほうがいいと思っていました。
ですから本気で叫んでいただいて正解です(笑)。
山寺
アニメになって「エ~、こんな声だったの?」とマイナスイメージにならないことが一番大事なんですよね。
特に長年に渡ってファンの方が楽しんできた作品ですから、「違う!!」と思われてしまうと残念ですから。
我々はドキドキです。
森
SNSで「グル~ミ~ アニメ」で検索すると、「グル~ミ~しゃべるんだ⁉」って感想を言う方が多かったのですが、実際にアニメを見たら驚くでしょうね。
『グル~ミ~』の本質は ギャップを理解すること
キャストのお二人はちょうどアフレコを終えられた直後ですが、感想はいかがでしたか?
山寺
うなり声ばかりだったので、結構喉が痛いですね(笑)。
一つ作品の中で、まったく言葉をしゃべらない役は久しぶりでした。
他の作品でもしゃべらない役はあるのですが、そのときは別なキャラクターでしゃべることがありますからね。
全編通してしゃべらないのは、この作品ぐらいです。
山寺さんが台本を持たずに演じられていたのが印象的でした。
山寺
台本、意味ないんですもん(笑)。
花江
絵を見た方が早いですよね(笑)。
山寺
かなり本気でやりましたね。そもそも猛獣や野生的というリクエストがあったので、そういう気持ちで演じていました。
花江
僕も本当に痛いイメージで受けていました(笑)。
それこそ最初は「ギャグっぽいほうがいいのかな?」と思っていたんです。
ですが「痛々しい方向でお願いします」というディレクションがありましたので、かなり本気で痛い感じで演じました。
ちょっとピティー君が心配になりますが……。
山寺
個人的には、いつかピティー君が狂暴になる話を見たいです(笑)。
「今日だけはだめだよー!」って厳しくなるような。
花江
でもピティーくんが本気で立ち向かっていっても、やられてしまうでしょうね(笑)。
ピティーくんは、それでもグル~ミ~が大好きなんですね。
花江
ピティーくんとグル~ミ~のやりとりが印象的でしたね。ほほえましいけど、毎回殴られたり、蹴られたり。実際のやりとりはとにかく痛い(笑)。
それでもグル~ミ~のことが大好きなピティー君は、純粋にすごいなと思いました。あれだけ痛めつけられているのに、グル~ミ~に対するやさしさが溢れていて。
そのアンバランスさ、ギャップが面白いです。
山寺
グル~ミ~はすべてギャップですよね。
森
そうですね。王道ですが、やはりギャップって大事なんです。
山寺さんが演じられたべビグルも、大人グルのギャップが見事に再現されていました。
山寺
緊張しましたね。
花江
すごかったですね。
山寺
僕もギャップという言葉は大好きなんです。
声と顔のギャップをはじめ、「いろんなギャップがあったほうが人間は面白い」というテーマで、『GAP SYSTEM』というCDシリーズを作っていたぐらいですから。
実は意外なことが出発点⁉ 『グル~ミ~』誕生秘話
山寺
そもそも『グル~ミ~』という作品は、どんなきっかけで誕生したんですか?
森
動物に対する矛盾っていっぱいあるじゃないですか? 文化にもよりますが、猫や犬は飼うけど牛や豚は食べる。
クマにしても、キャラクター化するとかわいい動物になりますが、実際にクマに遭遇したら恐怖するし無事ではいられませんからね。
山寺
結局、全部人間の都合に当てはめているだけですもんね。
森
そうなんです。キャラクターとしてはかわいいけど、本物は怖い。
最初はその矛盾とギャップを風刺した落書きだったんですよ。
山寺
落書きだったんですか!
森
そうなんです。
そこに自分が子どものころに飼っていた動物たちとの体験から、飼い主の気持ちとかを詰め込んだ形ですね。
山寺
くしくもここにいる3人とも猫を飼っていますけど、日常のペットとのやりとりがアイディアのきっかけになっているんですね。
森
ぜひ猫談義したいですね(笑)。
うちの子の中の1匹は、山寺さんの猫と同じブリティッシュショートヘアーなんです。色も同じで。
山寺
実はそうなんです。でも普段はかわいいけど、グル~ミ~と一緒でいきなり襲ってくる瞬間がありますね。
もう10年以上の付き合いになりますけど、「そこでくるか!」と(笑)。
森
僕もこないだ顔面をやられました(笑)。
花江
うちの猫はまったくないですね。
山寺
花江家の猫はひたすらかわいいもんね。
森
それぞれ個性がありますね。
うちの猫も襲ってくるのは、最初に飼い始めた1匹だけです。
全部で4匹飼っているんですけど、他の3匹はおとなしい。
最初に飼った子ですから、「一番強い、なんでも一番」というプライドがあるのかもしれませんが。
まぁ結局、動物が何を思っているのか人間には推測でしかなくて、実際のところわからないのですが。
山寺
そう考えると、グル~ミ~はピティーくんのことを好きなんですかね。
森
それもやっぱりわからないです。想像するしかないですね(笑)。
花江
ピティー君は大好きですね。
森
ピティー君はいいようにしか考えませんから。
きっとその方が幸せなんです(笑)。
山寺
グル~ミ~という名前も秀逸なんですよ。
波線(~)でつないでいるのが、いい雰囲気を出している。
森
普通の音引き(ー)だと平坦なイメージになってしまうんですけど、獣っぽいうなり声のイメージを加えたくて波線にしたんです。
ただTwitterのハッシュタグは、波線をきちんと認識しないのが問題で。
そもそもグル~ミ~が生まれた当時は、インターネットの検索などは、あまり考える必要がなかった時代でした。
ですからカナのハッシュタグは、紛らわしいですが仕方なく「#グルーミー」なんです。
山寺
そこは技術が追いついて欲しいですね。
森
あとで気づいたといえば、英語のスペルもそうです。
グル~ミ~を考えた当時は、世界広がることは想像もしていなかったので、ストレートに単語で「GLOOMY」とつけてしまったんです。
でもgloomyは「薄暗い」や「陰鬱」という意味がありまして。
海外では「Gloomy bear」、陰鬱なクマと呼ばれているんですが、これも意図しなかったことですね。
山寺
そんな意味があったんですね。
森
はい。そもそもは単純に音の響きと、ぬいぐるみや着ぐるみの「グルミ」と、「こいつに遭遇したら真っ暗(gloomy)!先が見えない」という言葉をかけた名前だったんです。
山寺
でも「イ~」で終わるのはいいですよね。
みなさん、写真撮るときは「グル~ミ~!」って言いながら笑顔で取ってください。
一同
(笑)
山寺
グル~ミ~のぬいぐるみをいただいて、家にずっと飾ってあるんですけど、デザインが秀逸ですね。
男の家にかわいいぬいぐるみが置いてあると違和感がありますけど、グル~ミ~は落ち着きます。
花江
血や怖さがワンポイントになっていて、男性の部屋にも合うんでしょうね。しかも派手な配色のバリエーションがあっても、違和感がないのは驚きます。
気まぐれなグル~ミ~は 猫のイメージに近い⁉
チャックさんからキャストのお二人にお聞きしたいことはありますか?
森
そうですね。もしペットと3分間話せるとしたら、何を話しますか?
山寺
難しいですね。ペットって「わからないところがいい」という部分があるじゃないですか。
一方で話せるものなら話してみたいという気持ちもあります。
今、うちの子はちょっと具合が悪いので、「大丈夫?」って聞いてみたいですね。
できれば楽しい会話がしたいなぁ。
たわいものない会話ができれば最高です。
花江
僕は餌の好みを聞きたいですね。「毎日同じ餌じゃないほうがいい?」って。
山寺
それは大変じゃないかな(笑)。
「あれがいい、これがいい」って言われたら全部用意しなきゃいけなくなっちゃう。
花江
今は健康食を与えていますけど、人間でもたまにはジャンクなものが食べたくなるじゃないですか?
森
実は僕も花江さんと同じでした!
「今まで食べたキャットフードの中で、どれが一番好きだった?」って聞きたいです。
山寺
気を使って食べているかもしれないですからね(笑)。
森
人間が勝手に選んできたものですからね。
山寺
なんか猫の話ばっかりになっちゃいましたね(笑)。
森
でもピティー君とグル~ミ~の関係は、猫と人間の関係に通じるものがあるんですよ。
花江
たしかに、グル~ミ~は気まぐれですからね。
森
そうなんです。
グル~ミ~は、犬というより猫のイメージですね。犬はどんなに不機嫌なんときでも、基本飼い主には歯向かわないですよね。
でも猫はおかまいなしで、ついさっきまで甘えてたと思ったら突然つっかかってくる。
ですから猫トークは、『グル~ミ~』に通じるものがあるんですよ。
それでは最後にファンのみなさまへメッセージをお願いします。
山寺
どんなふうにファンのみなさんに受け止めてもらえるのか、心配でもあり、楽しみでもありますね。
アニメをきっかけにして、グル~ミ~を好きになってくれる方が増えてくれるとうれしいです。それと繰り返しになりますが、写真を撮るときの合言葉は「グル~ミ~!」でお願いします。
花江
ほんとうに楽しく演じさせていただきました。
先生の誕生秘話や秘められた思いをお聞きすると、また違った見方ができると思います。
一方で短い時間のアニメということで、ちょっとした合間に、何も考えずに楽しむ作品としてもおススメです。
ファンの方も、まだ作品を知らないという方もいらっしゃると思うので、この機会にファンになっていただけるとうれしいです。
ぜひ放送をお楽しみください。
森
昔から好きでいてくださってるファンのみなさんは、あのバイオレンス描写をテレビでどう表現するのか心配と期待でいっぱいだと思いますが、もし想像の斜め上を行っていたとしてもグル~ミ~の新しい世界が広がった!と喜んでいただける作品になっていると思います。
そしてこのアニメ化でグル~ミ~を知ることになったみなさん、多少刺激は強めですがお気に召しますと幸いです。
とても短いショートアニメなので、足らん!もっと観たい!!となっていただけたら嬉しいです。