「クマがヒトを襲う」。
そんな誰もが想像できる、ありきたりなテーマに挑戦してみました。
まだクマに襲われたことがないぼくですが、飼っていたネコには度々ありましたよ、引っ掻かれたり噛み付かれたりの種を超えた下剋上。
経験のある方ならご存知かと思いますが、もう本気なんですよね。
その無謀さがまたケナゲでカワイイと感じてしまうんですが、よく考えるとこれって相手がネコだったからよかったものの、対トラ乃至ライオンだったら軽く躍り食いされているところです。
少なくとも中指くらいは捧げるハメに。
あと、ペットを飼っていて避けられないのが、自分の年齢を追い越されること。
こっちはまだコドモだというのに、あっという間にオトナになって更には老衰して先立たれる…。
ぼくはこれが一番イヤで、もうペットを飼えなくなるほどの純情っぷりに、動物を飼うって奥が深いなってつくづく思う昼下がり。
作品にはそんな少年時代の経験が生かされてたりするのですが、出血を伴う暴力描写が含まれてるせいか、一部のヒトによく悪趣味だとか言われたりします。
でも、××××××の看板や広告などで無邪気に笑ってるウシやブタのイラストの方がよっぽど悪趣味かつシュールでブラック。
なのにそういうものの方が圧倒的に世の中に溢れていて、なんら違和感無く自然に感じられるんですよね。
ぜんぜんそれでいいと思うんですよ。
地球上の全生物を支配しているのは人間。
広告はあくまでその人間向けなんですし、そうじゃないとぼくの絵なんておもしろくもなんともないですから。
森チャック
(アートブック『NO CONTROL GRIZZLIZM(2005)』あとがきより)
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MORI CHACK INTERVIEW
―グル〜ミ〜20周年おめでとうございます。20周年を迎えたご感想は?
ありがとうございます。
設定上で大人熊だったのが本当に成人してしまいました。
20年前の発表当時はまさかこんなに長く愛されるキャラクターになるとは想像もしていませんでした。
消えているとも思っていませんでしたが。
―グル~ミ~とピティーくんのインスピレーションは、どこから湧いたのでしょうか?
クマのキャラクターというのはぬいぐるみのイメージが強いせいか、いわゆる実際のクマのイメージとかけ離れているとずっと思っていて、森で遭遇したらめちゃくちゃ恐いのに、ぬいぐるみは愛でる。
単純にその矛盾を描きたかったのと、そこに飼い主の少年の純粋な心とか動物を飼うということの大変さ、責任、気持ちが伝わらないもどかしさ、愛情、共存、依存、人間よりも早く成長してしまう悲哀などを表現したかったことから、グル~ミ~とピティーくんが誕生しました。
―グル~ミ~は2000年に誕生して、すぐに大ヒットしていますが、その時の思い出を教えて下さい。
週一回、路上で手作りのポストカードを売るストリート活動からスタートしたのですが、アーティスト仲間も周りにたくさんいて文化祭みたいで、ほとんど楽しかった思い出しかありません。
当時その場所(大阪心斎橋筋商店街)でストリートをするのが流行ってて、そこでぼくの所には人だかりができていたのもあって雑誌やテレビの取材もわりとすぐに来たんです。
それであっという間に話題になり、大手プロダクションと契約して翌年には本格的に商品化も始まりました。
SNSも無いインターネットが今ほど普及していなかった中、毎週のように全国をサイン会やファンイベントで飛び回りました。すぐ海外にも呼ばれるように。
もうあんなに忙しくはしないと思いますが、とても良い思い出です。
―海外でも人気が出たことは、ビックリされましたか?
日本で人気が出た直後に香港のPCCWからも展開を始めたので、海外はまず香港から人気が出たのですが、びっくりもしましたし何より嬉しかったです。
言葉は通じなくてもキャラクターは万国共通なんだなーと。
その後どんどん世界に広まったのもインターネットの普及のタイミングとうまく合ったようで、日本にはこんなcrazyなキャラクターがいるのかと感度の高い人たちが見つけてくれたのでしょう。
あと、まだストリート当時のぼくの手作りのホームページに、ファンにもらった手作りのキーホルダーの画像とかを載せてたんですが、中国はそれが日本で売られている商品だと思ったのか、そのコピー商品が出回ってたのには驚きました。
コピーされたのに嬉しかったです(笑)。
―グル~ミ~は様々な方を魅了しているようですが、ファンに共通する特徴は何かありますか?
その他大勢ではない、センスのいい人。いい意味でマイノリティー。
―これまでにたくさんのコラボやグッズ化がありましたが、特に気に入っているものはありますか?
海洋堂のリボルテック、VERTEXのステアリング、あとシルバーリングですね。
―誕生時から、グル~ミ~のキャラやコンセプトに変化はありましたか?
設定をきちんと整理してからは変わってないですね。本当の初期段階ではコンセプトは曖昧でしたが。
―この20年を振り返ってみて、グル〜ミ〜のチャームポイントはどこだと思いますか?
いつもピティーくんといっしょにいるところ。何を考えているかわからないところ。
―チャックさんのライフスタイルには音楽の影響が大きいように感じますが、好きなアーティスト等はいますか?
映画のサントラとかをよく聴くのであまりアーティストにこだわりはありませんが、最近のキャンバス画はニルヴァーナを流しながら描きました。
―チャックさんの子供時代は、どんな性格でしたか? 昔からよく絵を描いていましたか?
性格は今の飲酒してない状態と変わらない子でした。
授業中はいつも教科書に落書きばかりしていました。
普通の社会人になるつもりが無ければ、それがアーティストへの一番の近道です。
―クリエイターやアーティストになりたい人達へのアドバイスをお願いします。
なんでもたくさん描いて何を描きたいのかを明確にして、これだと思ったらそれを更にたくさん描くといいと思います。そこを間違えないセンスは最低限必要ですが。
絵が好きな人はみんな子供の頃、クラスメイトにタダでいくらでも絵を描いてたでしょう?
それがお金や商品になるんだから最高の職業ですよ。
―チャックさんの好きな本と映画を教えて下さい。
本は日本残酷写真史。
映画はたくさんあるんですが3つほど抜粋すると、バタフライエフェクト(ディレクターズカット版)、
アイアンジャイアント、
インターステラーですね。
―チャックさんのインスタグラムには猫の写真が多いですが、猫がお好きなのでしょうか?
はい、猫がとても好きです。父母息子娘の4匹の猫が家にいます。
―最後に、世界のファンにメッセージをお願いします。
現在、国内も海外も、満足していただけるほどグッズの流通ができていなくて問い合わせをたくさんいただくのですが、ちゃんと届けられるように頑張りますので応援していてくださると嬉しいです。
ファンの方がグル~ミ~といっしょに撮ってくれた写真をSNSにあげてくれていて、それを見かけるたびとても励みになっています。
ありがとうございます。