GLOOMY

SPECIAL INTERVIEW

「グル~ミ~に込められた思い」
アニメ化記念 森チャック先生単独インタビュー

── そもそもチャックさんはなぜグル~ミ~というクマのキャラクターを描き始めたのでしょうか?

動物のぬいぐるみやキャラクターの定番ってクマじゃないですか?
犬や猫のぬいぐるみもありますけど、比率でみるとクマですよね。
そしてそのイメージと現実とのギャップが、もっとも激しいのもクマだと思ったんです。

キャラクター化されたクマって、めちゃめちゃかわいらしいですよね。
以前、子どもが警戒感なくクマに近寄っていく映像を見たことがあるのですが、その子にとって「クマは猛獣」という認識はなかったんでしょう。
猫や犬はペットとしてはポピュラーで、本物もかわいらしい。
でも本物のクマはかわいいかもしれないけど、猛獣です。
ついこの間、飼って4年目になる愛猫に顔をひっかかれましたけど、猫だから傷ぐらいで済んでいるわけで。
「クマだったら絶対死んでるな」と(笑)。

── たしかに多くのキャラクター化されたクマは、現実の姿とはギャップがありますね。

そうですね。
昔から動物に対する矛盾って、巷にあふれているんです。
個人的にその矛盾にとても興味があって、たとえば肉屋さんの看板で豚が笑っていたり、ハンバーグのパッケージで牛がナイフとフォークをもっていたりする。
そういう奇妙な表現は当たり前のように存在して、普段は見逃しがちだったりするんですが、冷静に考えたらめちゃくちゃブラックですよね。
そういう矛盾を描いた落書きを元にポストカードを作ってストリートで販売したら話題になって。
そこで一番人気があったのが「ピンクのかわいいクマが少年を襲ってる絵(後のグル~ミ~)」で、そこから火がつきグッズ化が始まりました。
2000年のことですね。

── その矛盾を創作の題材にするにあたって、チャックさんの中にはどんなイメージがあったのでしょうか?

そんな深刻な感情ではないのですが、違和感でしょうか。
その違和感にしても、嫌悪感ではなく、面白がってユーモアとして描いていたという方が近いです。
自分も含め「人間って自分勝手でバカで面白い生き物だな」みたいな、その矛盾をかわいい絵で風刺するのが楽しくて描いていました。
文化にもよりますが、猫や犬は可愛がる、でも豚や牛は食べる。
絶滅しそうな種は護り繁殖させ、必要以上に多い種は駆除する。
目障りな雑草は刈り尽くし、美しい花は飾り大切に育てる。
どれも同じ動物、植物なのに。
そしてその基準は地球カーストの頂点である人間次第なのです。
たとえばクマが畑を荒らせば、害獣扱いで駆除しますよね。
人間が作物を盗んだら、それは人間のルールとして犯罪になるんですが、人間はルールをわかっているから、罰せられて当然です。
でもクマはただお腹が減っていて、そこで美味しそうな食料を見つけただけ。
それは山の中で見つけようが、畑で見つけようが、彼らにとって違いはない。
そもそもその動物たちの住処だった場所を畑にしたり、食料のあった土の地面を細かい石と油で固めて潰したくせに。
全部人間の都合でしかないんですよ。
「害獣、害虫等」の「害」は単に人間にとっての「害」で、地球規模で見れば最大の「害」はまぎれもなく人間です。

── クマが「狂暴で怖い」というのも、人間側の論理でしかありませんからね。

『グル~ミ~』が誕生したころに「クマはこんなに狂暴じゃない、鈴をつけていたら怖くないんだ」っていう意見がありまして。
でも鈴をつけている段階で、もう恐れているわけです。
怖くないなら「なぜ人里に下りてきたら駆除しなければならないの?」という矛盾もありますよね。
逆にクマの気持ちを想像すると、危険を感じて威嚇したり、反撃したりもするでしょう。
グル~ミ~のピティーくんに対しての攻撃も何が理由かは分からないし、それを人間であるピティーくんが愛と感じれば愛なのです。
まぁ動物の気持ちなんて、結局はわかりませんからね、人間の勝手な想像でしかない。
『グル~ミ~』では、そんな様々な矛盾を描いているつもりです。

── 「狂暴」と「かわいい」を内包している点が、その矛盾を象徴していますね。

ただ、可愛いキャラクターがクマ本来の怖さを持っていると、なぜか拒絶感を示す方もいらっしゃいます。
でもそういう方は、実写で狂暴なクマが描かれるパニック映画等は別に平気だったり。
結局は見た目で判断されているんだろうなと。
「見た目がかわいい=内面もかわいい」じゃないと納得できない、というか。
どちらもクマの本質的な部分を描いていることに、『グル~ミ~』もパニック映画も変わりはありませんから。
そもそも『グル~ミ~』は、かわいいクマのキャラクターと、本物のクマのギャップを描いている作品です。
グル~ミ~が見た目も狂暴でイカツいクマだったら、風刺でもなんでもないものになってしまいますからね(笑)。
根本は、ただ「クマは人を襲う」というごく当たり前のことを描いてるだけなのです。
そのありふれたテーマに加え、ピティーくんが幼いころに大事にしていたぬいぐるみにそっくりだった仔熊と出会い、連れて帰るのですが、あっというまに成長を追い抜かれてしまいます。
どう見ても手に負えてないんですが、ぬいぐるみを捨てられた悲しい思い出が彼を強くして、どんなことがあってもグル~ミ~を決して見捨てない、というのがグル~ミ~のお話です。
自分の都合だけでペットを飼育放棄してしまう人が後を絶たない問題も、この作品のテーマのひとつですね。
あと成長の差については、グル~ミ〜に限らずほとんどのペットに言えることですが、人間より何倍も成長が早い=すごい速さで死に向かってるということ。
それを知ってか知らずか、そんな束の間の時間を2人はいつもいっしょにいるのです。

── ぜひ作品の成り立ちにまで踏み込んで見て欲しいですね。

まぁ短編アニメですから、あまり難しく考え過ぎず、肩肘張らずに楽しんで欲しい気持ちが一番です。
ぼくも別に世の中を変えようと思ってグル~ミ~を描いているわけではないので。
でもその中で発見や共感をしてもらえる部分があればうれしいですね。
森チャックみたいな角度で世の中を見てみるのもいいな、って。